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Desperate Measures 絶体×絶命

アメリカ映画 (1998)

ジョセフ・クロス(Joseph Cross)が、重要な脇役を演じるサスペンス映画。ジョセフの役は、骨髄移植を待つ小児白血病の少年だが、この映画の主役は病気のマット少年ではなく、マイケル・キートン演じる、無期懲役で刑務所に収監されている凶悪犯。マットの骨髄に適合する骨髄が、その凶悪犯のものしかないため、サンフランシスコ市内の病院に搬送された囚人が如何に逃げようとするかが物語の中心。しかし、ジョセフ・クロスは、事件の発端となるだけでなく、病院の中で移植を待つ身であることから、どんどん事件に巻き込まれていく。一方、父である刑事(アンディ・ガルシア)は、息子への骨髄移植の唯一のチャンスが失われないよう、逃走した囚人が警察に射殺されないよう、職務に反して囚人の命を守ろうとする。この親子の愛情が、映画を単なるクライムアクションとは一味違ったものにしている。アクションが多い中にあって、可憐だが芯のあるマットのキャクターは、十分に存在感があり、見ていてほろりとさせられる。なお、主要な舞台となる病院と刑務所は、以前紹介した『燃えつきるまで』で使われたピッツバークの歴史的建造物である(もちろん外観のみ)。

9歳のマットは白血病が再発し、骨髄移植が必須だが、移植バンクでは適合者ゼロ。刑事の父は違法と知りつつFBIのデータベースに侵入し、全米の囚人の中で唯一適合する男を発見した。それが、仮釈放なしの終身刑を宣告された凶悪犯マッケイブだった。さっそく刑務所に出向いて説得するが最初は断られ、しばらくして、マットに会いたいとの連絡が入る。実は、マッケイブはIQ150を超える知能の持ち主で、逃亡の可能性を調べ、マットとの面会を口実に交換条件を用意したのだ。①独房から一般房への移動、②喫煙の許可、③図書室の利用。一見ありきたりの内容だが、そこには、②麻酔を効かなくするための薬の入手、②ライターの着火石の入手、③コンピュータを使っての病院内の脱出ルートの解明、という意図が隠されていた。そして、いよいよ手術開始、マットは移植前処置の全身放射線照射のため抵抗力がなくなり無菌室で待機。しかし、マッケイブは手術直前に抗麻酔剤を飲んだため麻酔がかからず、手術台から飛び出し、着火石で酸素チューブに火を点けで大混乱を起こし、その隙に洗濯物用のシュートから逃走する。ここまでで33分。残りの1時間、マッケイブは最初の計画に沿って、大胆かつ予想外の行動を取り続ける。その混乱の中で、マットも大きな影響を受け、最後はマッケイブの人質にされてしまう。マットの父である刑事は、懲戒解雇や逮捕を覚悟の上で、(a)マッケイブを捕らえる、(b)マッケイブの命を守るという、相反する不可能事を成し遂げようと奮闘する。すべては愛する息子マットの命を救うために…

ジョセフ・クロスは、1998年に公開された3本の映画に主演、もしくは、準主演している。素直なキャラクターは変わらないものの、雰囲気は全部違っている。名子役から、そのまま現役で活躍している稀少な俳優の一人だ。


あらすじ

最初の部分は少し長くなる。冒頭、2人のサンフランシスコ市警の刑事がFBIの支部を訪れ、違法にコンピュータにアクセスする。2人のうちの1人フランクが、「テレビで援助を頼んで時間を無駄にするより、6週間前 これをやってりゃよかった」と言うが、見つかれば厳罰も覚悟の違法行為だ。そして、コンピュータは、たった1人だけ適合者を示した。その名は、ピーター・マッケイブ。喜んだのも束の間、その犯罪歴を見て2人は愕然とする。「2人を殺人:仮釈放なしの終身刑」「第1級殺人:懲役30年の終身刑」「加重暴行:禁固1年」「脱獄未遂:禁固3年追加」…。署に帰って調べると、「同房者の足を折って1年間の独房入り処分中」「中学しか卒業していないが、IQは150以上」「2度目の脱獄時には2人の看守を人質にし、生き埋めにして制服とIDを奪う」などの凶暴性が明らかになる。警部はやめるよう勧めるが、ずっと前に妻を亡くし、愛する一人息子の白血病が再発し、移植する骨髄の適合者はマッケイブしかいない。フランクは、刑務所に出向きマッケイブと面会し、「君が最後の望みだ。息子の命を助けてくれ」と訴えるが、「ムショにずっと閉じ込められた後で、また殺す機会ができたんだ。しかも、デカのガキをな。ここにじっとしてるだけでいい」と冷酷な返事。がっかりして、息子マットの様子を見に行く刑事。「体調はどう?」(1枚目の写真)。「あんまり」。マットは、本をプレゼントされて喜ぶが、ついつい訊いてしまう。「再発したんでしょ?」。「ああ」。最悪の事態を覚悟した無表情な顔だ(2枚目の写真)。「骨髄移植のドナーを見つけた」。これで、少し表情に活気が戻る。「ほんと? 適合するの?」。「ああ、でも迷ってる」。「嫌がってるんだ。それに、もしOKになっても、僕の体が移植に拒否反応を示すかもしれない。だから、知ってて欲しいんだ、それでもいいって。パパ、頑張ってくれたから」(3枚目の写真)。何ともけなげな少年だ。
  
  
  

そこに、電話がかかってくる。マッケイブからだ。「あれから考えたんだが、俺をマットに会わせたらどうだ?」。「会わせる? 何のために?」。「もし、そんなに面倒なら…」。そう言われれば、行くしかない。マットを同行して、再びマッケイブを訪れる刑事。この時までに、マッケイブは、病院脱走のためのプランを練り上げ、刑事に何を要求するかを決めていた。脱走すれば、当然移植はできない。最初からマットを助ける気などないのだ。そういう目で、マットとマッケイブ、マッケイブと刑事の会話を見ると、マッケイブの偽善性がよく分かる。まず、マットと2人だけで会ったマッケイブが声をかける。「やあマット、ピート・マッケイブだ。9歳とかいったな。それって、4年生ってことか?」。「はい」。「学校は好きか? 俺は、ヘドが出るほど嫌いだった」。「好きです」。「敬語はやめろ。ただのピートでいい。ピートおじさんだ」。「おじさんじゃないよ」(1枚目の写真)。「やってやる」。「何をですか?」。「お前に骨髄を移植してやる」。そこの言葉を聞いて、「パパ、やってくれるって!」と父に喜んで抱きつくマット(2枚目の写真)。静から動へ、マットの喜びの大きさが分かるが、移植する気もないのに、それを見ているマッケイブの残忍さが怖い。そして、マッケイブは父と「商談」に入る。「骨髄をやるのは、俺のために 幾つかやってくれた時だけだ」(3枚目の写真)。そして、条件を突きつける。所長と交渉して、「喫煙の特権を回復させろ。図書室への出入りを復権させろ。コーヒーには砂糖4個を認めさせろ。そして、俺を独房から出して一般囚に戻せ」。一見、何の変哲もない要求に見える。コーヒー云々は、それらしく思わせるためのダミーだ。
  
  
  

州知事の肝いりで交渉は成立。知事にとっても、マスコミ受けのする内容なので、フランク刑事がTVの前で謝意を示すことで、移植への一連のプロセスを承諾したのだ。マッケイブには、さっそくタバコ1本とライターが与えられ、誓約書にサインを迫られる。看守が去ると、プロセスが始まったと知り、さっそく靴ヒモを外し、親指に縛り付けて脱臼させる(理由は後述)。脱獄への第一歩をすぐ始めるところが周到で凄い。場面はすぐ、マットの病室に変わる。マットは父にマッケイブのことを知りたがる。「なぜ、刑務所に入れられたの? 人を殺したの?」。「そうだ」(1枚目の写真)。「その人が、僕の体に入って、僕の一部になるんだ…」(2枚目の写真)。表情が切ない。「断じて違う。あいつにはならん。老人から献血を受けたら、お前も老人になるか? 選択の余地があれば、あいつなんか選ばない」。「分かってる」(3枚目の写真)。
  
  
  

マッケイブは、一般囚との交流が許されると、さっそく屋上での運動時間中に調達屋と接触する(1枚目の写真)。「マッケイブだな。麻薬は扱ってないぞ」。「麻薬は要らん。嫌いだ。ナルカンを手に入れてくれ。過剰投与の中和剤だ。アンプル入りのやつが欲しい」。これは、全身麻酔を効かなくするためなのだが、素人として幾つか疑問がある。ナルカンは麻薬拮抗薬だが、効くのは全身麻酔にモルヒネやフェンタニルのような麻薬を使った時だけで、普通に使われるプロポフォールのような静脈麻酔薬に対しても、本当に効果があるのだろうか? しかも、モルヒネに対しても、ナルカンは、発効までに静脈注射で2分、筋肉注射で5分(鼻腔内噴霧でも効果があり)と書かれているが、飲用しても効果があるのだろうか? まあ、もしなくても、映画だから許そう。次に、マッケイブがやったことは、図書室のコンピュータからネットに接続、手術の行われる病院に隣接する旧館のフロア毎の設計平面図を見て、蒸気配管を脱出ルートにする(2枚目の写真)。ここでも疑問がある。公共建造物の設計図が一般に公開されているとは思えない点だ。これも、映画だから許そう。なお、蒸気配管は、管自体ではなく、管を通すための通路を指す。
  
  

移植手術を行う病院でも準備は進んでいる。1枚目の写真の右側が病院のある新館。左側が脱出ルートのある旧館。手術は新館で行われるので、マッケイブは手術室から逃げ出した後、中央にある5階の連絡通路を通り、旧館に行く必要がある。旧館の6階には、後でマットが行く感染症研究室がある他、大半は囚人病棟になっている。一方、刑務所では調達屋からアンプルを入手したマッケイブが、アンプルのくびれ部分に糸をかけて、それを歯に縛り、アンプルを飲み込む(この辺りも、具体的にアンプルをどう割るのか、割った後のガラスは胃の中でどうなるのか、よく分からない)。次に、ライターの着火石を取り出し、親指の爪の中に入れ、火花の出ることを確かめる。こうして準備を整えたマッケイブは、厳重な警備の元、郊外の刑務所から都心の病院へと護送される(2枚目の写真)。
  
  

病院では、骨髄移植のための全身放射線照射の準備に入っている。1枚目の写真は、装置の上に横になったマット。マーシャ・ゲイ・ハーデン演じるホーキンス医師が、「マット、1時間くらいかかるけど、始めていい?」と訊く。「どうぞ」。「リラックスしなさい。大丈夫だから」。父は、マットの顔を両手で挟んで「相棒、頑張るんだぞ、いいな? ずっと一緒だ」(2枚目の写真)と勇気づける。「分かってるよ、パパ」。全身放射線照射を行うのは、白血病細胞を死滅させるためだが、その副作用として免疫力が大幅に低下し感染症などにかかりやすくなるため(感染すると数時間で死亡する可能性大)、処置後は無菌室に入るのが必須条件となる。ここが映画の1つのポイント。
  
  

手術室に連れて来られたマッケイブ。後手になった両手には手錠、両足には鎖が付いている。しかし、採取する骨髄はちょうど手錠の位置にあるので、同行した警部は渋々手錠を外すことを許可する。手術台の両脇にある拘束ベルトでマッケイブの手首が固定される(1枚目の写真)。マッケイブは、アンプルを割って薬を飲み込むと、親指を脱臼させ、ベルトをくぐり抜ける準部を整える。そして、静脈注入により、全身麻酔が開始される。無菌室では、マットがじっと待っている(2枚目の写真)。横には、父の相棒の刑事のネイトが付き添っている。「パパはどこ?」。「戻ってくるよ。気分はどうだい?」。「眠いよ」
  
  

手術室では、BISの数値が84と高いままで下がらない。BISは麻酔中の意識レベルを示すもので、60以下になることが必要。ただ、どうして100でなく、沈静状態の84なのかは不明。その間に、マッケイブは両手を拘束ベルトからこっそり手を抜いておき、麻酔医が状況がおかしいと告げた瞬間、両足で警部を蹴飛ばした。医療スタッフが警部に気を取られている間に、起き上がったマッケイブは、酸素チューブを引き抜き、爪の着火石で点火し、即席の火炎放射器に変えてしまう。そして、スタッフの1人にひどい火傷を負わせて混乱状態を作り出すが(1枚目の写真)、そこに、上階のモニター・ルームで見ていた父が駆けつけ、マッケイブの脚を撃つ(2枚目の写真)。マッケイブは軽いびっこを引きながら、洗濯物用のシュートから地下に滑り降りて逃走。置いてあった白衣を着ると、再びシュートから一番近い1階に這い上がる。そしてレーザー処置室で技師をメスで脅して両足に付けられた鎖を焼き切らせる。ただし、病院で使う程度のレーザーメスで鉄の鎖が切れるかどうかの疑問は残る。足が自由になったマッケイブは、火傷を負ったスタッフの治療をしているホーキンス医師のいるERを急襲し、医師を人質に取る。そこに警官や父フランクも駈け付けるが、父は、マッケイブが射殺されると、それは同時に息子の死を意味することから、警官との間に入って撃たせないよう命じる〔ドナーが死亡すると、酸素の吸収が止まり、虚血性壊死状態になった骨髄は移植に使えなくなる〕(3枚目の写真)。その後、背後から近付いた別の警官との銃撃戦で、1人が死亡、1人が重傷を負い、フランク刑事の行為は、犯人幇助として逮捕・連行されてしまう。
  
  
  

マットに付き添っていたネイトから、鼻血が出ているとの情報を受け取ったホーキンス医師は、さっそく無菌室を訪れ、血小板を取りに行こうとする。その時、ネイトの背後からマッケイブが接近し、銃で頭を殴って昏倒させる。それを見て、「ネイト!」と、思わず無菌室のカーテンを開けるマット(1枚目の写真)。マッケイブは、「来るんだ、先生、あんたが要る」。「マットには私が要る」。「俺の方が要るんだ」。仕方なく医師は、外に出ようとするマットに、「中に入っていなさい」と命じる。マット:「なぜ、殴ったのさ。みんなが、あんたのこと ろくでなしって言ってたけど、よく分かったよ」。マッケイブ:「他にやり様がなかったのさ。いいか、先生はちょっと借りるだけだ、すぐ返す」。「ダメだよ、ここにいて欲しい」(2枚目の写真)。医師:「大丈夫よ。鼻をつまんでなさい。出ちゃダメよ。すぐに戻って来るから」。部屋から出たマッケイブは、医師にシクロプロパン(麻酔ガス)のボンベの保管場所に案内させる。シクロプロパンには爆発性があり、マッケイブの目的は、麻酔ではなく爆発の方。結果的には、新館と旧館を結ぶ連絡橋の爆破に使われる。
  
  

父は、一旦は逮捕されるものの、すぐに逃げ出し、機を見て、もう一度病院に戻る。真っ先に向かったのは、当然息子の部屋。部屋に入ると、マットは医師の命令に反して、床に倒れたネイトのそばで、心配そうに様子を見ている(1枚目の写真)。父は、それを見るなり、「マット、何も触るな。カーテンの中に戻れ」と命じる。マットは父に、「あいつ、ホーキンス先生を連れてった」と話し、さらに父の顔をじっと見て、「パパ、どうしたの?」と心配そうに訊く。「何でもない。奴は先生をどこへ?」。「プロパンか何かが どこかって訊いてた」。そして、頭を抱える父に、「パパ、何か すごく悪いことが起きてるんじゃない?」と尋ねる。「そうだ」。「手術は ないんだね?」(2枚目の写真)。死を覚悟したのだ。父は、何とか元気付けようと、カーテンに手を当て、「手を出して」と笑いかける。カーテンを挟んで父の手と合わせるマット。「あるとも」(3枚目の写真)「だが、少し休まないと」と言って、父は出て行く。
  
  
  

マッケイブは保管倉庫に案内させると、シクロプロパンを医師に袋に詰めさせるが、横を向いた瞬間、ボンベで頭を強打される。医師は、拳銃も奪って逃げる。すごく気丈だ。廊下で父とばったり会った医師は、マッケイブの居所を教え、拳銃を渡す。父は倉庫に駆けつけるが、その前に、マッケイブは液体酸素を床に撒いていた。液体酸素は、床に撒くとつぶつぶ状になってから蒸発するそうなので、映画の場面は事実に即している。撒き終わった時に父が到着。しかし、隙を見てマッケイブがマッチの火を投げ、大爆発が起きる。お陰で病院の自家発電装置も故障し、全館停電になる。非常用電源で暗い照明は入るが、無菌室の換気装置は停止したまま。医師は無線でネイトに、旧館の6階にある感染症研究室にマットを連れていくよう指示する。そのためには5階の連絡通路を渡る必要がある。ビニールカーテンで覆われたベッドごと、連絡通路に向かうネイト。中では、マットが無線で父に話しかけている(1枚目の写真)。「パパ? もし、僕が死んだら…」。「死ぬもんか」。「もしもだよ。ママに会えると思う?」。「よく分からんな」。「僕、もうママのこと ほとんど覚えてない。いけない?」。「そんなことない。仕方ないことだ」。「もし、僕が死んだら、忘れちゃう?」。「忘れるもんか。絶対だ」。「僕も、絶対忘れないよ、パパ」。切ない会話だ。父は、偶然窓のそばにいて、連絡通路を渡っていく無菌ベッドを目撃する。そして、目を上げると、その通路の上をマッケイブが旧館めがけて柵を乗り越えようとしていた(2枚目の写真)。
  
  

この先しばらくマットに無関係な部分が続くが、ストーリーの展開上欠かせないので、要点だけ簡単に延べよう。マッケイブは旧館に侵入し、真っ先に刑務所長を人質にとる。方法は、硫酸入りの注射器を首に押し付けること。そして、所長を殺すと脅して 中央管制室を占拠。結果、あらゆるドアの開閉をコントロールできるようになる。一方、ホーキンス医師は、高所恐怖症にもかかわらず、フランク刑事と連絡通路の上をマッケイブのように旧館へと向かう。しかし、入館する直前、マッケイブにドアを閉鎖されてしまう。フランクは、マッケイブが調べた「旧館からの逃げ道」は、自分も調べて知っている。ドアを開けなければ警察にバラす、と脅してドアを開けさせる。一方、マッケイブは警察に対し、逃走用のヘリを屋上によこせと要求するが、これはブラフ。実際は、昔の蒸気配管の通路から地下に逃げるのだ。マッケイブは、ヘリが屋上に到着すると、人質にしていた所長らを屋上に追い出すが、これを見て警察は5階の連絡通路を渡り旧館への突入を図る。これこそマッケイブが狙っていた罠で、通路の屋根に置いてきたシクロプロパンを銃で撃って爆発させ、警官全員を抹殺しようとする。しかし、それに気付いたフランクは、突入しようとする警官隊を銃撃で押し留め、自らシクロプロパンを撃って連絡通路を爆破する(写真)。警部だけは、それが警察を救うための行動だと気付く。
  

父は、マット、医師、ネイトの閉じ籠もっている感染症研究室の前に行き、電動式の厳重なドアを開けるように言うが、その背後から、マッケイブが忍び寄り、「銃をよこせ」と命じる。その時、ドアが開き始めるので、父は慌てて「閉めろ!」と叫ぶ。マッケイブは、インターホンを使い、「ネイト、俺は殺せない。不死身だ。マットのお陰でな。だが、このクソドアを今すぐ開けないと、フランクは10秒で死ぬぞ」と脅す。この言葉に唖然とするマット(1枚目の写真)。マットは、ネイトの制止を無視し、無菌ベッドから出て、開閉ボタンを押す。そして父に抱きつく(2枚目の写真)。かくして、全員が研究室に入る。ここで、医師とネイトが連携してマッケイブを襲おうとして失敗、ネイトが腰を撃たれる。マッケイブは、蒸気配管に近い死体安置所の場所を医師に訊き、一人で逃げようとするが、ここでフランクが余計なことを言う。「警部もトンネルのことは知ってる。俺が話した」。この裏切りに腹を立てたマッケイブは、「じゃあ、身を守らんとな」と言い、マットを人質にしてしまう。「息子に銃を向けるな!」。「移植の手間が省ける。引き金をひく、それで終わりだ」。銃を親子に突きつけて脅すマッケイブ(3枚目の写真)。マッケイブは、「代りに俺を連れて行け」との父の申し出を蹴り、マットを連れて部屋を出てドアを閉め、追ってこられないよう開閉装置を破壊する。
  
  
  

地下に向かうエレベーターの中で、マッケイブはマットに「撃つつもりはなかった。主張を通すためだ」と弁解する。「僕をどうするつもり?」。「決めてない」。「どうでもいいよ。どうせ死ぬんだ」(1枚目の写真)。「パパさんは、そう考えてないぞ」。「直面できないのさ」。これには、さすがのマッケイブも言葉がない。エレベーターが下に着くと、マッケイブは中に棚を入れて、移動できないようにする。そして、死体安置ブースの前を、マットを引っ張って歩く。「気分は?」の問いに、引っ張られる手を振り払い、「どう思う、アインシュタイン?」と噛み付くマット(2枚目の写真)。解剖室の一角に、蒸気配管の通路への隠された入口はあった。煉瓦壁の前に置かれたロッカーを全力でどけながら、マッケイブはマットに話しかける。「パパさんの、癌への思いは正しい。あきらめて死ぬなんて思うな。闘うんだ。闘い続けろ」。「何のために? ずっと病気でいろっていうの? 閉じ籠められて、友達とも遊べない。楽しいこともないのに、何の意味があるの?」(3枚目の写真)。映画の中で、一番重い言葉だ。
  
  
  

ロッカーがなくなり、剥き出しになった煉瓦壁に向かい、マッケイブは全力で斧を振るう。マットの目は、床にころがっているカナテコと、マッケイブの背中を交互に見ている(1枚目の写真)。体が入れる穴が開くと、マッケイブは、「ここで待ってろ。じき助けがくる。済まんな… 何かしてやれればよかったが」と言い、穴に入っていく。その背中目がけて、マットは、床に落ちていたカナテコを拾い、思い切り叩き付ける(2枚目の写真)。マッケイブは、「何しやがる!」と怒鳴るが、「パパが捕まえに来るのに、あんたが銃を持ってるから」(3枚目の写真)と返す勇気ある言葉に、「俺と同じ遺伝子だ」と、半ば褒める。「同じじゃない!」。マッケイブは、「適合してる。完璧にな」と笑って穴に入って行く。数分遅れて父が到着。マットは、マッケイブの逃げ込んだ穴を教える。「どっちへ?」。「左側」。「エレベーターまで戻って叫べ」。マットは父の背後から、「パパ、あいつ、疲れてるよ。捕まえられる」と声をかける(4枚目の写真)。
  
  
  
  

マッケイブは、蒸気配管の通路をくぐり抜け、マンホールから地上に出る。脱出成功だ。そのままトラックを奪い逃走。遅れて地上に出たフランクは、トラックを奪われた男を聴取に来たパトカーを拝借して追跡する。結構ハラハラさせられる追跡劇の後、フランクは、マッケイブを昇開橋に向かわせる。そして、橋の管理者に頼み、橋を上げさせる(1枚目の写真)。前にも後ろにも進めなくなったマッケイブ。警察のヘリが邪魔に入るが、フランクは、見事にマッケイブの足を撃ち、橋から落下させることに成功する(2枚目の写真)。自らも飛び込み、重傷で動けないマッケイブを救急車に入れ、マットの待つ病院へと急行させる。
  
  

無抵抗のマッケイブに対し、手術は順調に進み、220ccの骨髄が無事採取され(1枚目の写真)、マットの静脈に注ぎ込まれた(2枚目の写真)。父を見て笑う顔は、幾つになっても変わらないジョセフ・クロスの典型的な笑顔だ(3枚目の写真)。最後は、ホーキンス医師と父フランクと、マットのスリー・ショット(4枚目の写真)。しかし、フランク刑事には、この先、どんな罰が待っているのだろう? 死亡した警官は少なくとも2人。重傷者もかなりいる。マットについては、現在でこそリンパ性白血病の長期生存率(5年以上)は80%以上だが、映画の作られた時点のアメリカでは50%少々。映画の中とはいえ、生き永らえてくれることを祈りたい〔長期でも5年というの厳しい現実だが…〕。
  
  
  
  

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